これだけは知っておきたい!TKAに関する基礎知識~評価~アプローチのまとめ

 

ブログへの訪問ありがとうございます。

 

 

膝OAは臨床でもよく遭遇する疾患の1つではないでしょうか?

 

 

平成28年度国民生活基礎調査の結果によると、高齢者が要支援になる原因の1位が関節疾患であり、運動器の障害が高齢者のQOLを著しく障害しているとされています。

 

 

そんな膝OAの進行に伴いTKAを選択する患者さんも増えてきています。

 

 

病院でもよく対象となる疾患ですね。

 

よく対象となる疾患だからこそ「とりあえずROMして、大腿四頭筋鍛えて、歩行訓練をする!」ではダメですよ。

 

  • TKA後の痛みって何?
  • なぜ可動域制限が残るの?
  • 術後に注意することは?
  • 術後のバランス不良の原因は?
  • どうやってリハビリを進めればいいの?

などなど。

 

TKAに関する基礎知識~評価~アプローチについてまとめてみました。

 

 

TKA後のリハビリに悩んでいる方はぜひ参考にしてみて下さい。

 

TKAの手術概要

まずは動画でTKAがどんな手術かを見てみましょう。

動画元:yonemori ryokusenkai

 

もっと詳しく見たい方はこちらもチェック(30分近くあります)↓

*実際の手術映像なため、見れる人だけ見てください(Part3まであります)。

動画元:Attune® TKA Surgical Procedure-June 27th 2010-Part 1ーPart 3

膝OAの重症度分類

進行度の分類にはKL分類が最も一般的です。

*関節軟骨の減少と骨棘の程度により分類を行う方法

 

一般的に、グレードⅢ以降は手術療法が進められています。

 

このことを考えると、ある程度の年齢(60~70代)でグレードⅢ以降の方は、Drと相談して保存療法を続けるよりも手術療法を進めたほうがいいでしょう。

 

適応

TKAの適応の有無は膝OAの重症度だけでなく、年齢、疼痛や機能障害の程度、日常生活動作の困難さ、患者さんの希望など含めて総合的に判断されます。

 

 

しかし、臨床上術前の状態が良好な方ほど術後の回復がスムーズな印象があるため、Drとの相談になりますが、適切な手術時期と術式の選択が必要になるでしょう。

 

目的

TKAをする大きな目的として

  • 除痛
  • FTAの改善
  • 膝関節可動域の拡大

 

という機能障害の改善があげられます。

 

 

これにより今まで出来なかった日常生活動作を獲得すること及び生活の質を向上させることに繋がるため、膝OAの高齢者の健康寿命延伸が期待できます。

 

 

そんなTKAは安定した手術成績が期待できるようになりましたが、術後のリハビリのやり方などによって機能予後が変わってくる恐れもあります。

 

 

そのため、術後において担保される事として以下のことがあげられます

 

術前よりも改善した身体機能の保証

患者さんは術前の1番の問題であろう痛みの改善を期待しています。除痛されることでADLの拡大やQOLの向上が見込まれます。

 

 

可動域に関しては膝屈曲120°(最低でも110°)、伸展0°を目指していきます。

 

永続的な機能の保障

TKAの耐用年数は、現在25~30年といわれています。

 

だがそれは「正しい使い方」をしたときの話しです。「正しい使い方」とは、膝に負担のかけない動作ということです。

 

すなわち、長期成績を保障する運動パターン(膝に負担のかけない動作)の獲得を目指していかなければなりません。

 

デザイン

TKAのデザインについてはこちらをチェック↓

TKAのリハビリで大事なこと。デザインの種類と特徴をまとめてみた

2018.09.30

 

現在は様々なデザインがあり、最近ではないですがACL置換型もあるそうです。

 

皮切後の侵入と展開方法

TKAに対する皮切(皮膚の切開方法)後の侵入方法は、外側と内側があります。

 

 

Drの判断にもよりますが、一般的に正中または前内側から侵入していくことが一般的になります。切開は10~15cm程度です。

 

 

大きなポイントとして内側広筋を展開するか否かになります。

 

 

主な皮切の方法(内側)として以下の3つがあります。

  • Medial parapatellar approach
  • Midvastus approach
  • Subvastus approach

 

この3つのうち、内側広筋を切開するのは上2つ(Medial parapatellar、Midvastus)で温存するのは1番下(Subvastus)になります。

人工膝関節置換術は、Medial parapatellar approach(内側傍膝蓋進入路)が従来よく用いられてきたが、大腿四頭筋への侵襲を少なくするためMidvastus approach(内側広筋間進入路)やSubvastus approach(内側広筋下進入路)が普及してきた。

 ~標準整形外科学 第10版:p587~

 

以下の3つそれぞれ紹介していきます。

 

 

まずは内側広筋を切開する方法です。

 

Medial parapatellar approach

大腿四頭筋腱の内側縁、内側広筋の筋腱移行部で切開します。

 

最も展開が容易な方法とされています。

 

Midvastus approach

浅筋膜の深層でパテラ内側、内側広筋付着部を展開する方法です。

 

 

術後の大腿四頭筋の回復が早く、膝蓋大腿関節の安定性を得ることが可能で術後の疼痛が少ないのも特徴です。

図:https://www.orthobullets.com/recon/5031/tka-approaches より改変

 

 

Midvastus法は、Medial法に比べ膝蓋骨の血行障害が少なく膝伸展機構への侵襲も少ないようです。

 

 

次は内側広筋を温存する方法です。

 

Subvastus approach

パテラ内側から、内側広筋を温存するようにかわしながら切開する方法です。

 

 

内側広筋をそのまま温存できることから、術後の大腿四頭筋の筋力回復が早いのが特徴です。

 

 

また術後の疼痛が少ないのも特徴です。

図:https://www.orthobullets.com/recon/5031/tka-approaches より改変

 

あなたの患者さんがどの皮切、展開方法かはDrに確認またはオペ記録を確認するのが早いでしょう。

 

術後の合併症とリスク管理

術後に起こりやすい合併症は、手術に起因するものがほとんどです。

 

 

重篤なものとして肺血栓塞栓症が挙げられますが、ほかに深部静脈血栓症(DVT)、感染、出血、神経障害、皮膚壊死、縫合不全などが起こる可能性があります。

 

 

DVTの予防には術後早期に理学療法介入を行うことが重要ですが、生化学データのD-dimer値やベッドサイドでのDVTの陽性兆候のチェックをすることが大事になります。

 

DVTの陽性徴候についてはこちらをチェック↓

DVTの観察項目を知りたい|ハテナース

 

 

リハビリ介入時以外の予防法としては弾性ストッキングの装着、薬物的予防法、間欠的空気圧迫装置の持続的な使用が挙げられます。

 

 

その他、神経障害については伏在神経由来や外閉鎖筋による閉鎖神経絞扼障害を考慮する必要があります。

 

 

伏在神経障害に対する運動療法として、内側広筋斜走線維と大内転筋の柔軟性をしっかりと獲得したうえで、伏在神経の滑走訓練を行うことが有効です。

 

 

閉鎖神経障害に対する運動療法として、外閉鎖筋の反復収縮訓練や閉鎖神経の滑走運動が有効です。

 

病態の本質的な理解

経過の長い方は特に自己の動作パターンができています。

 

 

痛くないように足を棒のようにして歩いていたり、痛みを我慢しながら歩いていたりとそれぞれの患者さんの動き方があります。

 

 

今まであった痛みの根本的な部分は人工関節を入れたので解消するかもしれません。

 

 

しかし手術をすることで、O脚であった足が目を覚ますと真っすぐになっている。

 

 

患者さんはその新しい状態に対して即座に対応できるとは考え難いので、変化した身体運動に対して新しいボディースキーマを再構築していくことが重要になります。

 

 

つまり、術前の無意識に出来上がった動作パターンを作り直していくことが最重要課題となります。

 

リハを行う上で大事なこととアプローチ方法

原則として「痛みを出さない!」ことが大事になります。

 

 

なぜなら、TKAのオペをする方たちは長年膝の痛みと戦ってきました。

 

少しでも痛みを軽減するようにパターン化した動作で日常生活を送ってきた訳です。

 

 

そこでオペ後からROM練習などで、激しい疼痛を一度経験した患者さんが、防御性の筋収縮によってセラピストの誘導を受け入れにくくなってしまうことも少なくありません。

 

 

そうなってしまうと疼痛と運動が関連付けされてしまうため、更なる疼痛回避パターンを学習させてしまいます。

 

 

患者さんには、疼痛と運動が関連付けしないようしていかないといけません。

 

 

以上のように

痛みを出さない!」を前提として

①力を抜く ②運動自由度の解放 を目標にしていきます。

 

①力を抜く

あなたも経験したことはないですか?

 

ROMをする際のやりとり。

セラピスト:〇〇さん膝に力が入ってますよ。力を抜いて下さい。

患者さん:力が入ってる?抜いてるけどね。

 

特に術直後の患者さんでは、姿勢の変化とりわけ膝関節を動かされることは疼痛の再現と直結されているので、防御性収縮で抵抗してきます。

 

 

そのために「力を抜く」ということを患者さんに学習してもらわないといけません。

 

 

力を抜くためには、環境にあわせ動くために必要な知覚の手がかりを判別できないといけません。どういうことかというと、1つの例としてはこんな感じ↓

 

下肢を動かすための準備段階の状態です。セラピストは膝以外の部分から感覚入力である刺激を理解するための学習を促します。

 

 

そして、下肢を色々な方向へ移動させたりしながら知覚の手がかりを探索する手助けをしていきます。

 

 

ここで大事なことは痛みを起こさないように注意しながら、患者さんの身体を動かすことです。

 

 

痛みのない刺激を繰り返すことで、その刺激に対し「慣れ」が生じるため、刺激に対する閾値の低下が起こります。

 

閾値が低下することで、それぞれの支持面に対しパーキングファンクションがとれるようになってきます。

パーキングファンクションとは

支持面に接した身体部分がそれぞれに筋活動で結合されずに独立した重心をもって支持面から支えられている状態。

前提条件として物理的に支えられている必要はあるが、支えられている事を知覚できなければ筋をリラックスしてパーキングファンクションになることはできない。

誌上講習会「頚損・脊損のシーティング・トランスファー」 より

 

臨床では、座位になってもらい下肢をぶら下げる(90°屈曲)ことを目標としていきます。

 

 

それが出来るようになれば、左右同じスピードや角度で膝屈伸の運動をしていきます(セルフexとして指導しても効果的ですよ!)。

 

②運動自由度の解放

動くための準備ができたら運動自由度を増やしていきます。運動自由度は非常に複雑です。

 

 

TKAの患者さんだけではないですが、術後の多くの患者さんは多数の関節を一体化するように固定して運動することで、運動自由度の複雑さを減少させています。

 

 

そのような方のアプローチの1例として↓

ボールを使用した下肢の協調運動です。

 

 

ボールを使用するメリットとして、様々な方向に動かしたり押し付けたりできるため非常に使いやすいこと、患者さん自身も目で見ながら次の動きを予測することが出来るため、安心感があることなどが挙げられます。

 

 

上図のように足底でボールを前後左右や円を描くように転がしたりします。

 

 

患者さんには足底でボールをコントロールすることに注意を向けさせ、足底に対して股・膝関節が協調して働くようにしていきます。

 

 

この時セラピストが膝関節の回転軸を手で押さえることで、運動軸の手がかりをガイドしていきます。

 

 

下肢を動かすスピードや方向などをコントロールしながら行っていきましょう。

 

このときも痛みを出さないことがポイントになります。

 

 

また、座位で行うことで患者さんの視覚に入るため新しいボディースキーマの再構築に寄与していきます。

ボディースキーマとは

私たちは自分の腕や足が空間のどこにあるのか、自分の身体からどれだけ手が離れているのかを無意識的に知っています。この無意識的に知覚している身体各部の空間的関係を「ボディースキーマ」といいます。

身体図式の生成は筋、関節、腱、靭帯、皮膚、内臓、網膜、三半規管などの身体の感覚受容器からの情報に基づいています。

ボディースキーマは感覚情報に基づき生成されているということは、いつもとは異なる感覚情報が入るとボディースキーマが変化するということがわかります。

参考にさせて頂きました。詳しくはこちら↓

身体図式(ボディースキーマ)の概要、機能局在、リハビリでの遭遇

私たちセラピストのタッチや動かし方などで感覚入力を促すことができれば、ボディースキーマが変化し、運動を変化させることができます。

 

 

リハビリでは患者さん自身に動く感覚、動かせる感覚を認識させることでボディースキーマが変化し、患者さんの動作の変化につなげていくことが重要になります。

 

術後のバランス不良の原因は?

これは術前のFTAが大きい方に顕著に表れてきやすいかもしれません。

 

 

 

私の考えとして、術後のバランス不良の原因は術前に比べてFTAの変化(改善)があるのではないかと考えます。

 

 

これにより、今までの2関節筋優位での姿勢制御で支えることが出来ないため、術後のバランス不良に繋がっているのではないでしょうか。

 

 

そのために強化していく筋肉として、「大殿筋下部線維」や「大内転筋」があります。

 

アプローチ方法に関しては何でもいいですので、筋の作用などを考慮しながらアプローチしていきましょう。

 

こちらの論文もチェックしていきましょう↓

TKA後の歩行およびバランス能力に影響を与える術前機能的因子の検討

 

まとめ

長文になりましたが、TKA術後のリハビリについて様々な点からまとめました。

 

 

あなたの明日からの臨床に少しでも活かすことができれば幸いです。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

参考・引用文献

国分正一・鳥巣岳彦,他:標準整形外科学第10版.P587,医学書院,2008

整形外科リハビリテーション学会編:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション下肢改訂第2版.180-187,メジカルビュー社,2014

理学療法 特集 人工関節置換術と理学療法Vol.33 No11.971-979,メディカルプレス,2016

石井慎一郎:運動器疾患における運動課題の設定と結果の知識の付与方法.989-992,メディカルプレス,2005

カラダとキヅキ:理学療法新人、学生向け!これだけは知っておいたほうがいい!人工膝関節置換術の知識!

整形外科疾患の病態やリハビリテーションに関する理解を深めるブログ:人工膝関節全置換術(TKA)における皮切後の侵入方法とは?リハビリの影響とは?

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ABOUTこの記事をかいた人

大川雅史

当ブログへお越しいただきありがとうございます。総合病院勤務の理学療法士。「健康で元気な生活をサポートする」がモットー。一般の方、セラピスト向けに理学療法士としての知識を中心にアウトプットしていきます。